疲れやすい。やる気がわかない。良いことがあっても、憂うつな気分は変わらない。出かけたくない。
うつ病は、脳のシステムにトラブルが生じたために起こる、「憂うつ感」を主な症状とする病的な精神状態のこと。「何にも興味がわかない」とか「活動力が減退する」など精神と体の両面にわたって低調になります。
こうした症状が2週間以上続けばうつ病の可能性があり、早い時点で自覚できれば未然に発症を防ぐこともできますが、生活習慣病にも似ていて、なかなか自覚しにくい場合があります。
最近、新しいうつ病の自覚症状として注目されているのが「睡眠」です。「寝つくまでに30分以上かかる。途中で何度も目が覚め、異常なほど朝早く目が覚める。熟睡感がない」といった症状に思い当たれば、まずは生活習慣を見直し、改善がなければうつ病の可能性を考えましょう。
通常、憂うつな状態は、人間が本来持っている自然治癒力で和らいでいくものです。これが改善しなくなったり、さらに悪化したり、仕事や家事、育児、勉強、人付き合いなどの日常生活に支障が出てくれば、病気としてとらえ、治療を考えましょう。
全国で患者数は約100万人とみられているうつ病。生活の中のさまざまな要因が結びついて起こる病気です。
最も大きな要因はストレスです。
「家族や親しい人の死や別れ」「仕事、家庭、財産など、大切なものの喪失」「仕事や人間関係のトラブル」「環境の変化」などによる強いストレスがきっかけで脳内の神経伝達物質のバランスがくずれ、感情のコントロールがきかなくなってうつ病が起こるとされています。
ほかにも、「正義感・義務感が強い」「仕事熱心」「完ぺき主義」「几帳面」など性格的に脳のエネルギー放出が多い人は、うつ病発症のリスクが高いといえます。
治療には、「休養」「薬物療法」「精神療法・カウンセリング」の3つの柱があります。
「休養」は、仕事や残業を減らす、または一定期間仕事を休んで自宅療養をしたり入院治療をしたりと、患者さんの状態に合わせて実施します。
「薬物療法」は、セロトニンやノルアドレナリンなど、感情の調節に関わる神経伝達物質が正常に機能するようサポートする「抗うつ薬」を使用します。抗うつ剤は、効果が出るまでにおよそ2週間かかることや、多少の副作用があるため、専門の医師が状況を確かめつつ治療を進めます。
「精神療法・カウンセリング」にもさまざまな方法がありますが、共通しているのは「患者自身の治療へのモチベーション維持」が必要なことです。
抗うつ剤が効かず再発を繰り返す患者さんに向けて、低下した脳の働きを改善する「TMS:経頭蓋(けいとうがい)磁気刺激」という最新の治療法が加わりました。アメリカですでに改善効果が認められており、日本でも社会復帰を後押しする治療法として注目されています。