「トイレに行きたい」と思ったら、我慢がきかずにトイレに駆け込み、ときには失敗することもある。失敗が怖くて外出できなくなった。就寝中、トイレに行きたくなって何度も起きる。
1日に8回以上、夜間なら1回以上トイレに行く「頻尿」。急に尿意を催したら我慢がきかない「尿意切迫感」。トイレまで行けずに漏らしてしまう「切迫性尿失禁」。こんな症状は過活動膀胱です。
過活動膀胱は、排尿トラブルの一つで、尿が十分にたまっていなくても、膀胱が勝手に収縮・排尿するという病気です。
日本での患者数は800万人といわれ、40歳代で増えはじめて高齢になるほど増加。80歳以上の4割が患っているとされます。
生命に直接関わる病気ではありませんが、トイレの不安があると外出を控えたり睡眠が妨げられたりと、生活の質は下がります。
膀胱に尿がたまると、神経から脳へ信号が送られ、脳からは神経へ指令が出て、尿道の周囲にある筋肉を緩め、さらに膀胱の筋肉もゆるめることで排尿します。
過活動膀胱は、この脳と膀胱を結ぶ神経のトラブルが原因のひとつです。加齢や精神的ストレスによって、神経、脳、神経へという伝達と命令のやり取りがうまくできなくなるからだと考えられています。
これ以外の原因としては、とくに女性の場合は、加齢や出産で膀胱や尿道、子宮を支えている骨盤底の筋肉が弱くなり、脳からの伝令をうまく実行できないことがあるようです。
治療には2通りあります。
1つはトレーニング、もう一つは薬での治療です。
過活動膀胱は、骨盤底筋のゆるみ・たるみと、加齢が原因のため、膀胱や骨盤底筋のトレーニングで症状を改善します。尿意を我慢する時間を少しずつ延ばすトレーニングを併用することもあります。
「抗コリン薬」という、膀胱の収縮を抑える作用のある薬を服用します。これは、膀胱の筋肉を緩め、膀胱が勝手に収縮するのを抑えて尿をたくさんためられるようにする薬です。
過活動膀胱は、加齢による原因が大きいため、完全に回復することは難しいのですが、このような治療やトレーニングによって生活への支障を減らすことはできます。